埼玉・神川の日帰り温泉「おふろカフェ白寿の湯」(神川町渡瀬)に併設された「温泉サバ陸上養殖場」で6月15日、サバ初出荷のための水揚げが行われた。
同温泉は2011(平成23)年3月創業の「温泉道場」(本社=ときがわ町)が経営。地下750メートルの古生層から湧出(ゆうしゅつ)する塩分濃度の高い天然温泉が特徴。
「温泉サバ陸上養殖場」と名付た施設では、水を捨てずに循環・ろ過を繰り返して使える「閉鎖型循環設備」を設置し、塩分濃度3%ほどの人工海水でサバを養殖する。
2019年入社の鎌田奈津実さんは、山崎寿樹社長の「養殖やりたいね」という言葉をきっかけに、2020年に社内に結成された新規事業プロジェクト「養殖プロジェクト」に加入。鎌田さん(当時、副支配人)が「サバの養殖をしたらどうか」と提案したことがきっかけとなり、「海なし県」の埼玉で行うサバを育てるプロジェクトが始まったという。
2021年10月、埼玉県初となるサバの陸上養殖場オープン。養殖を始めて約2カ月たったとき、サバの稚魚500尾と成魚500尾全てが全滅する事態に陥り、当初予定していた養殖場見学や釣りのアクティビティーを中止せざるを得なくなった。鎌田さんは「サバがふんをするとアンモニアが発生するが、そのアンモニアの毒性を分解するバクテリアがうまく機能せず、亜硝酸が水槽内にたまって亜硝酸中毒を引き起こしてしまった」と振り返る。
鎌田さんらは2022年1月からサバが生育できる状態の水づくりを行い、バクテリアが活性化するのを確認したうえで同年4月から、約 1000 尾のサバの稚魚の養殖に再チャレンジした。約20トンの巨大水槽2つで、餌は1日2回、手まきで与えたという。
今回、300グラムほどに成長した約200尾のサバを出荷する。大部分は、2023年1月~2月に実施したクラウドファンディングの返礼品(サバの刺し身、サバの押しずし)になる。同温泉施設内の「お食事処 俵や」で刺し身として提供も予定する。
現在「おふろカフェ 白寿の湯」支配人に就く鎌田さんは「海のない埼玉県で海を近くに感じられる文化発信拠点を目指し、海や水産業に関するイベントを定期的に開催していきたい」と意欲を見せる。「埼玉県内で初めて陸上養殖でサバを育てることができたので、より多くの人に食べていただいて、おいしいという感想を頂けることを楽しみにしている」とも。