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【地域めぐりレポート】 美里の自然の美しさの中、えごま粉を使ったガレットが人気の古民家カフェ【竹zen】

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趣のある古民家カフェ「竹zen」

 昨年、埼玉県児玉郡美里町にオープンした古民家カフェ【竹zen(ちくぜん)】。

「日本の古き良き美しさを守りたい、伝えたい」と話すオーナーのYUKIさんを取材してきた。

 インタビュアーは埼玉県北部地域振興センター本庄事務所の原葵衣さん。「地域めぐりレポート」の一環として、地域の魅力を伝える活動をしている。

原:「竹zen」という店名の由来について教えて下さい。
YUKI:「竹」の自然と、「zen」とはお膳のzen、善き心のzen、禅の心のzenで癒やされる空間を作りたいという気持ちで名付けました。
原:なるほど、たくさんの素敵な想いが込められているんですね。このカフェが出来るまでの経緯を教えて下さい。
YUKI:まず、茅葺屋根の裏の天井をきれいにするまでに約1年かかりました。そのあと、木造建築に詳しい大工さんを探すのに更に1年、ようやく1年かけてセルフビルド(極力自分の手で作る)で作り上げることが出来ました。

 親戚のお家を残したいという思いと、お母さまの夢であったカフェを作りたいという思いを継いで、5年ほど前に美里でカフェを開くことを決めた。

オープンまでの道のり

 カフェをオープンするにあたって、YUKIさんはまず京都で半年ほど古民家ゲストハウスでカフェや古民家事業について勉強をした。

 更に、YUKIさんは4年ほど前には、京都の民間のプロフェクトに参加させていただき、古民家リノベーションを学んだ。

 その際に京都で出会った設計士の紹介により、理想の木造建築プロの大工「都幾川木建」さんに依頼することができた。

 YUKIさんはたくさんの旅をしており、アジア、ヨーロッパ、フィジー、モロッコなど17カ国ほど周ったそうだ。世界の建築や料理を多く知り、その中で改めて日本の素晴らしさに気づいたという。

 2017年9月19日にカフェ施工に着手。

 オープンは2020年8月8日。2021年8月に1周年を迎える。

2階はギャラリーやイベントスペース

 趣のある階段で、2階へ上がってみる。

 2階に上がると、大きな窓が壁一面に広がる。そこから見える庭にはYUKIさんや知人の手掛ける農園が広がる。

原:2階はギャラリーになっているんですね。
YUKI:ギャラリーとイベントスペースになります。先月初めて、ワークショップも開催いたしました。
楠本:ギャラリーの作品を紹介していただけますか?

YUKI:友人や作家さんの作品を販売しています。自然素材を使用した作品を作られている方に声をかけさせていただいています。美里町の和紙作家さんの和紙もおいています。

楠本:地元の作家さんの作品もあるんですね。苔玉も素敵ですね。
YUKI:従兄弟の庭師である金子が、苔玉や店内の竹細工などの監修もしております。一昨年、全国の技能グランプリで優勝し、内閣総理大臣賞を取っておりますので、素晴らしい技術はあると思います。

 日本の伝統文化を継ぐ職人さんたちを応援したいというYUKIさん。苔玉や畳、藍染などを埼玉県や群馬県の職人さんたちと一緒に体験するワークショップを開催している。参加した地元の方々も、自然素材に触れる心地よさを体感して、美里の美しさや素晴らしさを再確認し喜んでいる。

 たくさんの人脈を持つYUKIさん。興味を持ったらすぐに自らアクセスすることで、数多の情報を手に入れることができる。そうしたことで、伝統文化を繋いで行きたいという同じ志を持つ、吉見町の畳屋さんと出会うことが出来た。そこから更に、YUKIさんが以前から会いたいと思っていた神川町の刀鍛冶職人さんとも縁が繋がり、今後イベントを一緒にする約束も出来たという。

 美里町の方々にも協力いただき、地産地消にこだわり、メニュー開発に取り組んだ。

 大きな窓の外を眺めると、庭の農園にはブルーベリーの木。YUKIさんは、ブルーベリーの木を見て四季を感じてもらいたいと話している。自然食材、自然調理にこだわるYUKIさんは、カフェで使う食材をなるべく自分や農家さんから直接仕入れて使っている。庭の農園で取れたブルーベリーは加工などはせず、生のブルーベリーとして販売している。

伊藤所長:ご苦労されていることはありますか?
YUKI:自分一人で仕入れや仕込みをしているので、その辺は大変です。

 カフェは週末だけの営業になる。

 かつて養蚕をしていたこの古民家は大きな茅葺き屋根で、オープン前の掃除が一番大変だったそうだ。学生時代はバスケットボールを本格的にやっていたYUKIさん。その時に培った根性が、オープン時や今に生かされているという。

 他にも、ギャラリーには書道家の書や、山梨県の椅子作家さんが作る椅子などが飾られている。

カフェには様々な装飾が施されている

 再び1階に下りてみる。

原:こちらのスペースをご紹介いただけますか?
YUKI:こちらは馬小屋だったスペースです。古い土壁を剥がして、自分で新しい土壁を塗って作りました。

原:すべてYUKIさんが考えられたんですか?
YUKI:個室の天井のデザインはほぼ自分で考えましたが、天井を上げるという個室一番のポイントは都幾川木建さんによる提案です。

原:旅館のような雰囲気で、とても素敵ですね。

 馬小屋がリノベーションされた空間には、細川紙という楮(コウゾ)から作られている和紙で装飾されており、天井には養蚕の道具を再利用したオシャレなデザインが施されている。

 お風呂とトイレだったスペースは、カフェのトイレになっている。あえてヒビを生かした荒壁は、とても趣がある。

 「自分がどこかのお店に行ったとき、トイレがキレイだと安心します。なので私も極上のトイレを作ろうと思った」と笑うYUKIさん。言葉の通り、とても快適で清潔なトイレ空間が保たれている。トイレに入る際の足元には、一見普通の差し石がある。実はこれ、モルタル造形で作られた差し石。本物に見えるので見逃してしまうが、モルタル造形だと知ってから見てみると面白い。

(左から:本庄事務所の伊藤佳子所長、堀越泉さん、原葵衣さん)

 カフェの様々なスペースに、お母様が持っていた骨董や工芸品が飾ってある。懐かしく感じたり、新しく感じたり、世代によって感じ方が違うのも楽しい。

 お店のインスタグラムには、オープンまでの過程が美しい写真とともに詳細にアップされている。

看板メニュー「美里ガレット」

 では、おすすめのカフェメニューの紹介。通常ガレットはそば粉を使うが、竹zenでは美里のえごまの粉を使っている。地産地消にこだわったYUKIさんが考案したメニュー。

原:えごまはたくさんの料理に使える素材だと思いますが、その中でも、なぜガレットにしようと考えられたのですか?
YUKI:クレープをメニューに入れようと思い鉄板を購入したのですが、せっかくならガレットも作って、農家さんたちの美味しい野菜を使ったメニューにしたいと考えました。
原:地元産のものを使っているんですね。
YUKI:農家さんに、今どんな野菜があるかを聞いて、その時期に採れるお野菜で作っています。

 ハムは美里町の白石農場の幻の古代豚と言われるハムを使用。白石農場さんには直接電話で交渉し、ガレット用に薄めのものを特注しているというこだわりようだ。

 えごま粉の生地は、外はカリッと中はモチモチとしていて、とても美味しいと原さんは話す。ハムは油が少なくて、さっぱりとした感じ。野菜もシャキシャキしていて、甘みがとても強いそうだ。自家製のブルーベリーもジューシーでガレット生地とよく合うと笑顔で感想を話した。

 この時期はお店の横で取れる筍も味わえる。炙ってカレー味に調理してある筍は、スパイシーで食感も良いそうだ。ガレットは、カレー味、タコス味。日替わりのご飯の「竹zenご飯」は、ガパオライスや和風キーマカレーなどがある。

原:フランス料理のガレットや、ガパオライスにタコス味など、とても多国籍ですね。
YUKI:はい。私自身洋食も好きで、得意料理としてます。古民家=和食というイメージがありますが、もっとオリジナルの味を作ってみたいと思いました。
原:世界を回るのがお好きだったという経験が生かされているんですね。
YUKI:そうですね。旅の中で美味しかった料理などを「作ってみたい」と感じたことも大きいですね。

 固定観念にとらわれず、自由でバラエティ豊かなメニューも魅力的だ。

「ダルゴナブルーベリーヨーグルト」

 自家製のブルーベリーを使ったドリンクも人気。下がヨーグルト、上がダルゴナのブルーベリークリームになっている。ダルゴナとは韓国で人気になった、ミルクをホイップ上にしたもの。ヨーグルトの酸味と、クリームの甘さがとてもバランス良くて美味しいそうだ。層になった見た目も可愛らしい。

「えごまのドーナツ」

 最後は、美里産のえごまの粉ともち麦の粉を使った焼きドーナツ。試食した原さんは、ほろっとした生地で、甘さも控えめで美味しいという。えごまもクセがなく、とても食べやすく、もち麦の甘さが噛むごとに優しく広がるそうだ。

美里ガレット 1200円(税込み)
他メニュー 各1000円程度

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古民家 竹zen(ちくぜん)
埼玉県児玉郡美里町大字甘粕807
土曜日・日曜日午前11時~ランチのみ
(現在コロナウィルス感染拡大防止の為、完全予約制にて、人数とお時間を限らせていただいてのご案内となります。)
予約はインスタグラムからできる。 

「竹zen」インスタグラム

https://www.instagram.com/chikuzen_yuki/

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