神川町役場で10月19日、浮世絵師・木下大門さんが同町出身の力士「武蔵野門太(むさしのもんた)」の錦絵を町に寄贈した。
浮世絵師・木下大門さんが制作した武蔵野門太の錦絵(提供=神川町教育委員会)
門太は同町小浜(こばま)出身。初土俵は1833年で、しこ名は神田川。2年後に「武蔵野」に改名し、1838年に姫路藩酒井家のお抱え力士となった。最高位は前頭4枚目。
門太は力士としては小柄だったが、極めて巧妙な技を使う「手取り力士」だったと伝えられている。1852年に引退し、引退後は年寄「大嶽」を継いだ。門太は歌川国貞らにより何枚もの錦絵が描かれている。
木下さんは日本相撲協会認可の大相撲錦絵の浮世絵師。昭和の横綱大鵬と同じ北海道弟子屈(てしかが)町出身。イラストレーターだった木下さんは1980(昭和55)年、旅行先の中国・北京で木版画の工房を訪れる機会があった。木下さんは「帰国して調べたところ日本で浮世絵師がいないことを知り、浮世絵を復活させたいと思い立った」と振り返る。
木下さんは勝川派の流れを踏襲した伝統的浮世絵師として、明治以来途絶していた相撲錦絵を復活させた。相撲錦絵は国技館内で販売される土産品の目玉として、ダイアナ妃来日時の観戦記念など多くの外国要人に寄贈したという。
同町に寄贈した錦絵は、縦=約36センチ、横=約26センチ。桜沢晃町長は「国技といわれている日本の伝統文化である相撲の世界で、江戸時代に前頭4枚目まで昇進、活躍した力士が神川町出身ということで大変誇りに思う」と話す。「寄贈いただいた浮世絵とたくさんの資料を元に、町の偉人として広報し、ホームページ、展示などで紹介し、町の活性化を図っていきたい」とも。
同町関係者は「本年度中に企画展を開きたい」と意気込む。