ニカラグアが「火山と湖の国」と呼ばれていることは、既に紹介しました。首都のマナグア市もソロトラン湖(琵琶湖の1.6倍)のほとりに広がる街で、別名、ソロトランの恋人と言われています。実際、ソロトラン湖畔の遊歩道はマナグア市民の憩いの場です。しかし、このソロトラン湖はマナグア市からの生活排水などが原因で水質が悪化し、一昔前は湖に近づくと悪臭が漂っていたそうです。現在は、下水処理場やごみ処理場が整備されて、湖に近づいても不快な匂いはしませんが、水の色は濁っていて、ソロトラン湖の魚を食べることは出来ません。
そんなソロトラン湖の水質改善に手を差し伸べたのが滋賀県です。滋賀県は琵琶湖の浄化に向けて長年にわたって取り組んできた知見を有しています。特に「うみのこ」事業は素晴らしいです。滋賀県では、40年以上前から琵琶湖に浮かぶ学習船を所有し、県内の小学5年生全員を1泊2日のフローティング・スクールに参加させています。船内では、琵琶湖の透視度を調べたり、プランクトンを観察するなど環境教育が行われます。JICAを通じて、滋賀県のこうした取り組みを知ったマナグア市も「UMINOKO」事業を開始しました。ソロトラン湖の遊覧船を活用して、1泊2日とはいきませんが、約2時間のプログラムを組んで市内の小学生にソロトラン湖の歴史、水質、ごみの分別などを教えています。これまでに、約1,000名の子供たちが、このマナグア版「UMINOKO」に参加しました。
私はニカラグアに着任して初めて滋賀県とマナグア市の交流を承知しました。40年以上にわたる滋賀県の取り組みには本当に頭が下がる思いです。そして、滋賀県から謙虚に学ぼうとして、出来る範囲から取り組みを開始したマナグア市の姿勢も立派だなと思います。日本の大使として、滋賀県の「うみのこ」事業を世界に向けて大いに広報したいと思いますし、マナグア市の取り組みを応援してソロトラン湖を生き返らせる、そんな壮大なプロジェクトにも参加したいと考えています。
こうしたことから、先日、滋賀県を訪問しました。毎年、中南米地域の日本大使が東京に集まって中南米大使会議が行われます。この会議に参加するため一時帰国した機会を利用して、滋賀県に出張しました。実際に、滋賀県の子供たちが乗る「うみのこ」学習船を見学したり、琵琶湖とその地域で暮らす人々のつながりを紹介する琵琶湖博物館を訪問しました。また、滋賀県で国際機関との連携を担当している国際湖沼環境委員会のみなさんとも意見交換させていただきました。最後に、三日月大造知事を表敬し、ニカラグアへの支援の継続をお願いし、快諾をいただきました。
今年度からJICAの草の根技術協力による支援も決まり、滋賀県とマナグア市の関係者が相互に訪問するなど本格的な交流が始まる予定です。日本の大使として、滋賀県とマナグア市の交流を一生懸命応援して参ります。
滋賀県が所有する学習船「うみのこ」。この船は2代目
琵琶湖博物館訪問
琵琶湖博物館のレストランで食べた天丼。びわ湖の固有種ビワマスと外来種のブラックバスを食材に使っているそうで、おいしかったです。
滋賀県庁で記者会見を開いていただきました。記者の方からたくさんの質問をいただき、ニカラグアへの関心の高さを知りました。