
本庄の国道17号線近くにあり、老朽化の危機に直面している「唐鈴(とうれい)神社」(本庄市小島5)の調査が5月に始まった。長年の風雨により社殿は深刻な損傷を受け、雨漏りや砂・風の侵入も見られる。地元住民と「ものつくり大学」(行田市)の学生らが連携し、社殿の再生に向けて動き出している。
同神社は、奈良時代の遣唐使・大伴宿根古麿(おおとものすくね・こまろ)が唐の第9代皇帝・玄宗(げんそう)より航海安全を祈願して授かった鈴に由来し、孫の良磨(よしまろ)が、杵築(きづき)大社(現=出雲大社)から勧請(かんじょう)した分霊とともに地元の五穀豊穣を祈って創建したと伝えられる。
例大祭や子どもみこしなど、地域の祭事の中心として親しまれてきたが、本殿や幣殿(へいでん)の傷みは激しく、応急処置が必要な危険な状態にある。
地元有志らは2023年11月5日、「小島歴史文化保全基金審議委員会」を立ち上げた。同委員会は、小島自治会の会長・副会長、老人クラブ・子供育成会の会長、地元選出の市議会議員、本庄市文化財保護審議委員らで構成され、矢島淳一同自治会長が同委員会の会長を務める。
同委員会は第1号事業として鳥居の修繕を完了。市の補助金を使わず、寄付金と住民の浄財で神社の本殿・幣殿の保存活動を進めている。寄付の呼びかけは回覧板や氏子組織を通じて行っている。同市在住の30代男性は「この取り組みは地域の自発的な文化財保全モデル」と話す。
同委員会から委託された同大は4月25日、横山晋一教授による受託研究を決めた。矢島会長が同大創設者と交流があったことがきっかけだという。
横山教授指導の下、大学院で文化財建造物の保存修復を研究する青山莉緒さんは学部生2人と共に同神社の現状調査を始めている。青山さんは京都府内の高校で彫刻を学んだ後、就職したが、改めて専門学校「東洋美術学校」で保存環境調査と修復技術を学んだ後、同大大学院に進んだ。
青山さんらは現在、劣化状況の詳細な調査、現状図面の作成、保存に必要な措置の記録を進めている。破損が進む社殿の様子を見て、「すぐにでも応急処置が必要な箇所がある」と言う。
矢島会長は「文化財は、その土地で生きる人の歴史そのもの。地域の人たちと共に守っていくことが本当の継承。唐鈴神社の修復事業は、単なる建物の保存を超えて、人と人、過去と未来、地域と若者をつなぐ大きな文化財再生のプロジェクト」と話す。
現状調査は今年の秋ごろまでを予定している。