かつて養蚕が盛んだった本庄・児玉で11月22日、地元の保育園児が「繭から糸を紡ぐ」体験を行った。
同市のボランティアグループ「児玉再発見の会」では、子どもたちに町の歴史を学んでもらおうと9年前から蚕の見学会や「繭から糸を紡ぐ」体験会を行っている。当日は児玉保育園児34人が町内にある、かつて蚕を飼っていた「蚕室」を訪れ、この時期に盛んに行われていた「糸取り」を体験した。
体験会では、直径30センチほどの鍋の中で今年採れた繭をゆで、小さなほうきのような道具で糸をたぐり出す。生糸を巻き取る木製の装置に取り付けられた糸を園児らが交代で歯車を回し、昔ながらの手作業で糸を紡いだ。この作業は絹織物を織る際の工程の一つ。およそ長さ3センチ、直径2センチの楕円(だえん)形をした白い繭から、細くて光沢があり1300メートルに及ぶ長さの糸が巻き取られた。
春から夏にかけて桑の葉を食べながら成長する蚕の幼虫は、およそ1カ月たつと口から糸を吐き出し、羽の生えた成虫になる準備として身の回りを覆う繭を作り、その中でさなぎになる。さなぎが入った繭をゆでて取り出された糸は「生糸」として輸出されたり、国内では絹織物の材料になったりした。中のなさぎは食用として、つくだ煮や飼料などとして利用された。
同園の田嶋直子園長は「子どもたちは、繭が鍋の中でコロコロ転がっている様子にとても興味を示していた。こうした経験をさせていただいてとてもありがたい」と話す。
「児玉再発見の会」の金子昭一さんは「児玉は繭の町だった。蚕を飼い、繭を取り、そして繭から糸を紡ぐ、という養蚕が大切にされてきて、『競進社のある町』『繭の町』と言われて繁栄した。そのことを伝えるため、これからも園児や児童と一緒にこの催しを続けていきたい」と話す。