以下、在ニカラグア大使館の荻野正裕全権大使から届いた「ニカラグア便り-2-」全文です。
ニカラグア便り-2-
2025年は日本とニカラグアが外交関係を開始して90年になります。
この節目の年を盛り上げて、さらに両国の関係を推進しようと、たくさんのイベントを準備しスタートしたところです。今回は、その一部を紹介します。
どこの国でも、1年に1度、多くの関係者を招いてレセプションを開催し、国の魅力をアピールします。日本は天皇陛下の誕生日(2月23日)の2月に、このレセプションを実施しており、今年、ニカラグアでは2月13日に開催し、国会議長、外相を始め400人近い招待客のみなさんが参加してくれました。
私の挨拶はもちろん、国会議長や外相の挨拶でも90周年に言及があり、出席者に長い友好の歴史を印象づけることが出来ました。昨年12月に伝統的な日本酒造りがユネスコの無形文化遺産に登録されたこともあり、かねてからの知り合いである会津地方の酒蔵が応援に駆けつけてくれたり、マナグアで有名な日本レストランも初めてレセプションに参加してくれるなど、90周年のキックオフ・イベントに相応しい華やかな夜になりました。
日本とニカラグアの二国間関係の90年は「協力と信頼の歴史」と言えます。日本はニカラグアに対して長年にわたり、国造りの基礎となるインフラ整備や医療、教育、飲料水などベーシック・ヒューマンニーズと言われる分野を中心に協力を行ってきました。その代表的なプロジェクトの一つが、マナグア首都圏での上水道整備です。私は、およそ30年前の90年代半ばに中南米向けのODAを東京で担当していました。ニカラグアも担当する国の一つで、最初にニカラグアに出張したのもODAに関するニカラグア政府との交渉が目的でした。駆け出しの外交官として初期の上水道プロジェクトに取り組みましたが、30年後に日本大使としてニカラグアに戻ると、日本は、その後も漏水の削減に向けた技術協力などを地道に継続し、その集大成としてマナグア市上水道整備計画を実施中でした。
この計画の工事も無事完了し、2月14日、給水タンクなどを正式にニカラグア政府に引き渡す供与式に出席しました。90周年のハイライト・イベントの一つです。 約20億円の協力で完成した給水タンクは日本から技術者が出張し、日本の繊細で最先端の技術を用いて溶接され、しっかりとメンテナンスが行われれば、500年程度は使用可能との説明に私を含め出席者一同はみな驚いていました。30年の長きにわたる協力の裨益者はおよそ200万人に達します。日本の協力によりマナグア市のみなさんに清潔な飲料水が提供されます。子供たちが下痢などの病気に悩むことも少なくなるでしょう。30年前、最初の計画に携わった私としては、とりわけ感慨深い瞬間でした。
日本の魅力を伝える日本文化紹介も日本大使館の重要な仕事の一つです。特に、日本から遠く離れた中南米地域で、また、ニカラグアのように経済的に日本への旅行が簡単ではない国では、文化交流事業は重要です。ニカラグア随一の文化施設であるルーベン・ダリオ劇場のホールをお借りして、2月19日に日本版画の展覧会を開催しました。ルーベン・ダリオは国際的に知られたニカラグアを代表する詩人で、今でも彼の詩は国中で愛されています。劇場トップのラモン・ロドリゲス氏は大変な親日家で、ニカラグアで最も格式の高い劇場の展示スペースを日本の展覧会のために提供してくれました。多くの方々の支援をいただいて90周年のイベントが実現しています。これからも、いろいろなイベントを重ねて90周年を盛り上げていこうと思います。